ぽっぺんしゃんにょろりんこ

匿名・非追跡型アダルト動画検索エンジンの設計ノート

グーグルやDMMに勝てるのか?個人開発のアダルト動画検索エンジンの生き残り戦略という話

こんにちは、にょろりんこの備忘録ブログです。

個人でプロダクトを開発していると、必ずと言っていいほど頭をよぎるのが「この先、大資本が本気で参入してきたらどうする?」という問いです。

検索エンジンを作れば、グーグルがいる。アダルト領域なら、DMMSODのような圧倒的な資本力をもつ企業が控えています。

広告費、営業網、インフラ、法律対応、人材獲得力──あらゆる面で、個人は企業に敵わないように見えるでしょう。ですが、本当にそうでしょうか?

「資本に勝つ」ことを目的にせず、そもそも「戦場に乗らない」戦略はあり得ます。そのひとつが、私がSaePornsで採用している焦土作戦です。

この記事では、大手資本との札束の殴り合いに巻き込まれずにプロダクトを生き残らせるための考え方、結論から言うと「焦土作戦」について書いていきます。

そもそも焦土作戦とは何か?

焦土作戦」とは、私がSaePornsという検索エンジンに込めた戦略的思想です。その核心はひとことで言えば──徹底的に儲けないこと。

ガッツポーズするティアラ

資本主義の世界において、収益性が高いサービスには必ず大手が群がります。広告モデル、サブスク、手数料ビジネス。どれも「儲かる構造」があれば、資本が札束で押し潰しに来るのが常です。逆に言えば、「まったく儲からない構造」にしておけば、資本は興味を示しません。

これが焦土作戦の本質です。言ってみれば「儲かりそうな土壌」に自ら火を放ち、誰も入ってこられない焦土にする。これが焦土作戦です。

「儲けずに伸びる」──そういう矛盾した命題を、本気でやってみようとする戦略です。

焦土戦略はなぜ有効か?

では、なぜ「儲けない」ことが、有効たりうるのでしょうか?

理由はシンプルです。儲からない場所に、誰も来ないからです。

巨大資本が動く理由は明確です。投資した以上のリターンが見込めると判断されたときだけです。利益率、成長率、スケーラビリティ。いずれかが高いときにだけ、VCや大企業が「進出」してきます。逆に言えば、仮にユーザー数が増えようとも、マネタイズ不可能な構造なら彼らは来ない。

これはクラウドソーシングで有名な「Craigslist」や、広告なしで世界中から信頼される「Wikipedia」が証明しています。

どちらも「収益化しない」「拡張しない」「人を増やさない」を原則としながら、結果的にインターネットに不可欠な存在となりました。なぜ成立するのか?

それは、「資本家が喜ぶような儲けを出さない」からです。儲からない領域に居続けることは、結果として唯一無二になるという強みにつながります。

焦土作戦は、防衛ではなく攻めです。

「もうこの土地は焼き払われているから、資本主義的にうま味がない」と思わせることで、市場からの奪取ではなく、独立した存在になる。資本が避けて通るフィールドに、ひとり立ち続ける。

こういう戦略を採択することによって、大企業や資本家にとってはうまみが無いので、進出してきません。

それは、無防備なようでいて、最強の防衛でもあります。これが焦土作成です。

焦土戦略のデメリット──最大の問題は、私が儲からないこと(笑)

さて、確かに「焦土作戦」によって大手競合との札束殴り合いは避けられますが、やってる本人からすると割と過酷です。

なにせ「儲けない」ことを目的化してるので、当然ですが――私が儲かりません(笑)

サーバー代もドメイン代も、誰かが払ってくれてるわけじゃありません。Sae-Porns.org も .org だからって非営利団体の補助があるわけじゃないんです。誰が払ってるかって? そう、私です。

みんなが動画を検索してる裏で、私は本業で稼いだ金を使ってVPS代を払ってる。

焦土作戦を採用する限り、どれだけアクセスが増えても一銭にもなりません。

資本も人材も集まらないのは当然

焦土戦略には「お金を稼がない」以外にもう一つ強力な特徴があります。

人が来ません

エンジニアもデザイナーも広報も、そりゃあ仕事としてお金が発生しないプロジェクトには入りにくいですよね。まして「稼がないぞ!」という旗を掲げていたらなおさらです。

結果、すべてを一人で回す必要がある。体調を崩したら更新が止まるし、燃え尽きたらそのまま焼け野原。これが「焦土作戦」のリアルです。

資本が手を差し伸べてきても、無視するしかない仮に話題になったとして、「ぜひうちで事業化を」みたいな話が来るかもしれません。

でもその時に答えるのはこうです:

「いや、うちは焦土でやってますんで(笑)」

──ええ、笑ってるけど本気です。

焦土作戦でもプロダクトのサステナビリティは担保できるのか?

ここで出てくる疑問は当然、「そんなに儲けないやり方で、本当に続けられるの?」ということです。結論から言えば、可能です。ただし、いくつかの条件があります。

まず第一に、プロダクトそのものが極限まで軽量で、運営コストが低いこと。

SaePornsでは、すべてにおいて「いかに軽く保てるか」を最優先に設計しています。

極限まで切り詰めた帯域設定、遅延なくでも軽くのUI、最低限のDBアクセス──そのすべてが「焦土戦略を成立させるための前提条件」となっています。

次に、成長に比例してコストが爆発しないこと。

一般的なWebサービスでは、ユーザーが増えると同時にインフラコストや人件費が雪だるま式に増加します。

しかし、SaePornsのような個人開発プロダクトでは、そもそも爆発的なトラフィック増加によって赤字になるような構造を設計段階で排除、可能な限りすべての処理を自動化する設計思想で作られています。

そして、最後に必要なのはほんのわずかな収益で十分、という覚悟と工夫。「月100万円稼がないと無理」ではなく、「月3万円でも持続できる仕組み」を先に作っておく。

そのためのごく控えめな広告だったり、あくまでユーザー体験を壊さない形の寄付導線だったり。

いわば「生活コストに合わせたプロダクト設計」を成長戦略として引いている、ということです。

サステナブル ≠ 成長しない。むしろ粘り強く、しぶとく伸びる戦略

「儲けない」「低コストで運営する」というと、成長を諦めているように聞こえるかもしれません。しかし、焦土作戦におけるサステナブルは、ただ現状維持を目指すものではありません。

むしろその逆で、「長く」、「しぶとく」、「確実」に成長していく設計思想です。

たとえば、資本注入を受けて急成長するプロダクトは、数年で急拡大し、同時に焦げ付きもします。売上目標、KPI、投資家対応、広告費合戦、あらゆる要素が「短期的勝利」に集中しがちです。

一方、SaePornsのようなプロダクトは、成長スピードは緩やかでも、「壊れない」「止まらない」「捨てられない」。

じわじわとファンを獲得し、紹介や被リンク、ユーザーのロイヤルティを通じて自然に成長していくスタイルをとっています。

しかも、焦土戦略なので、仮に後発企業が大資本を投下してきても、それに乗っかるインセンティブを潰してしまう。つまり「真似するだけムダ」という土俵を築けるわけです。

この「焦土×粘り強い成長」こそが、今の時代における個人開発の生存戦略であり、「急成長できない」ことを悲観するのではなく、むしろ急成長しないからこそ潰されないという設計が、大きな武器になるのです。

日本のプロダクトは「営業力ゴリ押し」で勝つスタイルばかりです

ちょっと、日本のプロダクトを見ていると、どうしても違和感を覚えることがあります。

技術的な優位性や思想ではなく、営業力のゴリ押しでシェアを取る──そんなスタイルがあまりに多いのです。

よくあるのが、「うちの営業が先に学校法人に入り込んでる」とか「自治体に配ってるから勝ち」というタイプの勝ち方。そこにはユーザー本位の思想や、プロダクトそのものの磨き込みはあまり見当たりません。

実際、「プロダクトそのものは正直イマイチなんだけど、大手に売り込めたから広がった」というようなプロダクトは少なくないでしょう。公共系、教育系、医療系……まさにそういった領域で、プロダクトより営業が強いかどうかが勝敗を決める構造がはびこっています。

この違和感は、ウェブに限らず、日本のどの業界のどのプロダクトでも感じている人は多いと思います。

「同じものを、広告と営業でゴリ押しする」日本の構造に、反証を叩きつけたい

かのマイケル・ポーター『競争の戦略』でこう言いました。「他社と違うものを売るか、他社と同じものをより安く売れ」と。(まあ、言い回しは違いますが意訳するとこんな感じです。)

これは競争戦略として極めて健全で、消費者の利益にもつながる原理です。

しかし、今の日本のプロダクト市場は、この原理が完全にねじ曲がっています。「他社と同じものを、より高く、より派手に、よりしつこく売る」──営業力と広告費で押し切るゴリ押し戦略が、なぜか正当化されてしまっているのです。

例えば、機能的にはほぼ横並びのサービスでも、「どれだけ大手に入り込んだか」「どれだけテレビCMを打てたか」「どれだけ営業が足で稼いだか」で勝敗が決まってしまう。それはもはや競争ではなく、陳情合戦と根回し大会です。

そしてそのコストは、すべて最終的に消費者が負担します。進歩のないプロダクトに、巨額の広告費が上乗せされて提供されているという事実。

だから私は、「他と同じものを広告で売るだけの世界」に対する反証を作りたい。それが SaePorns のようなプロダクトに託している願いでもあります。

他と違う思想を、他と違う設計思想で。売るためではなく、使われるためのプロダクトを作る。

広告や営業でねじ伏せる文化ではなく、地に足のついた競争に戻したい。

デルタモデルにも「札束で殴れ」とは書いていない

もちろん、「安くないし、新しくもないのに売れてしまう」例外はあります。例えば、かつてのマイクロソフトWindowsなどは、Mac OSの模倣的な面もありつつ、価格も安いとは言えない製品でした。

それでも勝ったのは、販売網、囲い込み、ネットワーク効果、そして戦略的な供給契約など、全体でロックインを構築したからです。これは、デルタモデルでいうところの「システム・ロックイン戦略」に該当します。

デルタモデルには、企業が取りうる主要な戦略として以下の3つが示されています。

ベストプロダクト戦略(Best Product Positioning)
※高品質・低価格で市場を取る、従来の競争型モデル。

顧客ソリューション戦略(Total Customer Solutions)
※顧客に寄り添い、サービスや体験を最適化して長期関係を築くモデル。

システムロックイン戦略(System Lock-In)
※補完財、パートナー、サプライヤーなどと連携し、ネットワーク効果で脱出不能なエコシステムを構築するモデル。

そして、どの戦略にも、「他社と同じものを、広告宣伝や営業マンのゴリ押しで売る」ことは含まれていません。それはむしろ、戦略が欠落していることの証左です。

日本のプロダクトが直面している問題の一つは、本質的な差別化(ポーター)も、顧客との関係構築(デルタモデル)もないまま、営業力でねじ込むしか選択肢がないという構造です。

私は、この状況に小さな反証を投げかけたいのです。

なぜ日本は札束殴り合いが有効なのか?

これは、消費者のせいかもしれないし、投資家のせいかもしれないし、企業のせいかもしれない。「なぜ日本では札束の殴り合いが勝ち筋になってしまったのか?」という問いには、いくつか仮説はあります。

たとえば――

・消費者が「有名なもの=安心」と考えてしまう傾向

・投資家が「広告でスケールできるか」を最重視する構造

・企業文化として営業部門が絶対権力を持ち、エンジニアリング軽視の風土

……などが考えられます。

ただ、これらについて深掘りすると、今日のテーマからは逸れてしまうので、今回はあえて扱いません。

とにかく私が言いたいのは、「営業ゴリ押しで勝負する構造から降りる選択肢もある」ということです。

まとめ:個人開発プロダクトが取るべき戦い方とは

ここまで述べてきたように、日本のプロダクト市場では、営業力や広告費による「札束の殴り合い」が、まるで正攻法のように語られています。

しかし、それは本当にプロダクトの本質に根ざした、消費者のためや、社会のためになる勝ち方なのでしょうか?

私はそうは思いません。

Saepornsは焦土作戦――つまり、儲けないことで戦場そのものを無効化するというアプローチを選びました。

ウィキペディアやクレイグスリストのように、価値を届けるが、利益は追わない。

このやり方が、全員にフィットするとは思いません。ただ、少なくとも札束に怯えながらプロダクトを作るのではなく、「戦わずして勝つ」ための選択肢があることは、多くの個人開発者にとって希望になるはずです。

プロダクトの魂を殺さないために。営業力がすべてという空気に、静かに反証を示すために。

私たちは、焦土の中でも咲くプロダクトを作っていくべきです。

それではみなさんよい開発ライフを。

本文中に出てくる、開発中の「あなたを追跡しないアダルト動画の検索エンジンSae‐Porns」はこちらから

sae-porns.org